Black Feather 02 本文冒頭サンプル

どうも、いけだです。

当サークルの活動の中心である「ブラックフェザーシリーズ」、

その02の本文の冒頭の部分を掲載いたします。

無断に転載したりしないでください。

印刷した本はまだ少し在庫があります。イベントなどの際にもしよければぜひお手に取ってください。

文庫判・300円です。自家通販は工事中です。

(正直、02の時期の文章はさすがに拙い極まりないと、自分でも思ってます…)


「えー、こちらは今学期からみなさんと一緒に勉強することになった、長山さんだ。さ、簡単に自己紹介を」

「長山シオンです。親の仕事で転入してきました。よろしくお願いします」

三月十七日。

三学期は十日ほど前からすでに始まったのだが、お花によると手続きがどこか問題を起こしていたので、この日の転入を余儀なくされた。

クラスの前で簡単に自己紹介を済ませ、一礼する。もちろん親の仕事も何もないが、マンガで読んだ限り、これは一番普通かつ疑われがたい転校の理由だそうで、それだけだ。

嘘は嫌いではない。しかもこういう状況だ。

よく思い出してみれば、六年ほど前に、私が家を出て、転入生として新しい中学校に入学した時にもこれを言ったかもしれない。

教室の中をざっと見渡す。生徒は二十五人前後いるが、少なくともこのクラスには翼人がいないようだ。

この間読んだマンガだと、私が校門をくぐるや姫様らしき人物に話しかけられ、散々トラブルに遭った挙句姫様と同じクラスに入るはずだった。

世間はそれを「偶然」と呼び、または「都合」と呼ぶ。さすがにマンガのよう好都合なわけにはいかない。

翼人同士の間は反応するが、個体を特定するまではできない。そして相手の能力<翼のおくりもの>も知らない。ただし、別に翼人同士が会って戦うわけでもないし、もし何かをするとしたら、せいぜい同類に出会った喜びを語り合うか、身分を隠しながら生きる者同士で慰め会うか、そのどちらかだ。

でも今みたいな状況では割と便利だ。校内にそれらしき人を捕まえて「夜の姫でございますか?」を聞くわけにはいくまい。翼人のこの勘に頼って、あとはネリフィオンと姫様の絆の力を信じるしかない。

愛と絆の力だなんて、本当に自分でも笑える話だ。

指定された席に座る。小柄のためか、前から二列目に座ることになった。今気づいたが、さっき自分は微笑んでいろいろ話すつもりだったが、クラスメイトの反応から見ると思った以上に無表情だったのかもしれない。

こいつらがどう思おうが私の知ったことではない。高校生の身分もあくまでカモフラージュだ。さっさと姫様を見つけて、元の生活に戻りたいのが私の本音だ。

三学期は短い。それでも二か月間はある。大学はまだ春休み中だが、アルバイトにもいけず、実に面倒な話だ。アイリンにも若干申し訳ないが、自分の家系に関することを頼まれた以上は断れない。

ネリフィオン。この名をあんなに拒んで忌み嫌っていたのに、短い間とはいえ、今はこの名のために正体を隠し、こんな日常からかけ離れた生活を送らないといけないなんて、なんて理不尽な世界なんだろう。

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長山さん、前はどこに住んでいたんですか?

長山さん、部活はもう決めた?

長山さん、お誕生日はいつですか?

今日の一コマ目の授業が終わるなり、私の席がすぐクラスの女子たちに囲まれることにな…らなかった。

人は案外他人に関心を抱えていない生き物だ。

窓の外をのぞいてみたら、さっきまでずっと曇っていた空がようやく晴れて、太陽がお寝坊している大地を呼び覚ますところだった。

教室の中も元気がなく、もう二ヶ月経ったがまるでお正月気分から抜け出しきれていない生徒たちが目をこすりながら無駄話を重ねている。きっと昨日はまた夜更けしてテレビでも観ていたのだろう。

一瞬不安が脳裏をよぎった。

縄田高校高等部は三つの学年にクラスが六つずつあり、一つのクラスに生徒が三十人前後いる。併設している中等部、つまり隣にある縄田中学校に詳しくないが、恐らく高等部と同じか、それ以上の人数だろう。

ここの学生になって一週間、未だに姫様の手がかりがない。このままではまずい。

校庭の中で歩き回ると何人か翼人の気配はする。中には姫様を含まれているかもしれないが、私には知りようがない。

だいたいネリフィオン家と夜の姫の関係でさえ曖昧なのである。一体何によって結ばれ、何によってお互いを引き付けあうのか。

まさか愛と絆の力ではないだろうな。

(以下、本編に続く)

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